<肌トラブル>アトピーの子どもにしてあげられること③【洗うこと編Part2】

前回のコラムで、お子さんの肌をやさしく洗ってあげましょう、というお話をしました。今回は、洗いすぎや過度の清潔志向には気をつけて、というお話です。

 

ちょっと矛盾しそうですか?

 

肌を清潔にすることは大事なことですが、行き過ぎた場合、アトピーの肌には辛いことになってしまいます。肌のことも少し勉強しながら、洗うこと・清潔にすることについてもう少し深くみてみましょう。

 

■洗い過ぎると、肌はどうなるの?

 

アトピーの症状で皮膚科に行った時のこと。肌の状態を検査してもらったことがあって、その結果、私の皮膚には黄色ブドウ球菌がほとんどありません、という診断でした。でも、これは薬では増やせないから、肌を自分でケアするしかないんですよ、と言われました。

 

皮膚には、常在菌という細菌が約10種類以上あります。黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌などです。これらは、皮膚の脂肪をえさにして脂肪酸の膜をつくり、皮膚を弱酸性に保っています。これが、酸に弱い病原菌を体内に入れないようにしてくれます。つまり、アトピーの肌は、自分で自分を守るチカラが弱いんです。

 

肌を洗い過ぎると、この常在菌を奪ってしまうことになります。常在菌が減ると、皮脂膜がはがれてしまい、その下のうるおい層(角層)の中が正常に機能しなくなり、うるおいが漏れやすくなってしまいます。

 

東京医科歯科大学 名誉教授 藤田絋一郎先生(『アレルギーの9割は腸で治る!』だいわ文庫)によると、お風呂に入って石鹸でからだを洗うと、皮膚常在菌の90%がとれてしまうそうです。でも残りの10%があれば、正常な肌の人ならば、数時間で常在菌は戻ってきますが、アトピーの肌はそうはいかないのです。

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■抗菌・除菌を気にしすぎていませんか?

 

お子さんがひとりというご家庭も少なくないと思います。兄弟姉妹がいるよりは、ママの目が行き届き、手をかけてあげられるのは、お子さんにとっても安心ですよね。

 

話がちょっと遡りますが、1992年の朝日新聞に記事に「清潔はビョーキだ」という記事が掲載され、それによると、1960年代半ば頃に、結核や寄生虫の感染者がほとんどいなくなり、同時に、「泡でしっかり肌を洗いましょう」「家の中はバイ菌だらけ。しっかり除菌しましょう」「ウィルスからからだを守る抗菌グッズを使いましょう」などなど、清潔志向が免疫力の低下を招き、アトピーなどのアレルギーが増える原因となっているとしています。

 

アトピーのお子さんをお持ちのママたちは、ウィルスや細菌を気にするあまり、いろんな抗菌・除菌グッズ・薬用(と名の付く)商品を使っていませんか? そういった商品は、商品自体に抗菌・除菌する効果を持たせるために、どんな成分が使われているか分からないですし、「薬用」というのも、薬用という表示を得るために使う成分があり、抗菌・除菌作用のあるものは、皮膚に触れると常在菌はすぐにやられてしまいます。

 

たとえば、除菌スプレーを使って食事をするテーブルを拭いたとします。その除菌スプレーのどんな成分がテーブルや空気中に残るか分からないし、日常生活から細菌を取り除きすぎると、お子さんの成長段階で免疫力を養う機会を奪ってしまい、より、アトピーを治していこうとする自分の肌のチカラを奪ってしまうことにもなります。

 

アトピーの症状をケアしながら、同時に、強いからだを作ってあげるひとつの方法として、清潔志向をほどほどにするというのも、長い目でみたらお子さんのためになるのではないでしょうか?

 

 

 

筆者のご紹介

Ayumi Kudo_2工藤亜由美

子どもの頃からの自身のアトピーを治すため、病院通いや様々な方法を試行錯誤した経験と、体質について学んだ漢方の知識、15年以上携わった化粧品会社でのスキンケア商品開発経験から学んだ肌のことをベースに、スキンケアに関する情報発信や化粧品の開発・販売を行う。ドクターが所属するスキンケア情報サイト・スキンケア大学でもコラムを執筆中。

 

オー・リーブ・ジャパン株式会社 代表取締役
漢方上級スタイリスト
オリーブオイルソムリエ
澄(スミ)クリアローションHP